新しい技術の探求と譲れないところ久しぶりに自分用のジャケットを作ってみました。
生地はスーパー120'sにカシミア&シルク混紡のため、非常に柔らかく光沢があります。布地の表面には鱗のような織り柄が入っており、見る角度により色の深さや艶の具合が変わります。それを気に入ってこの生地に決めました。
今回は試作で新しいマシンメイドの縫製工場を使ったため、当店のパターンでは無く、試しにその工場のデザインとパターンでお願いしました。デザインはハイゴージに高めのポケットで、シェイプの効いたウエストラインが出ていました。襟の吸い付き具合や肩周りのフィット性は良く出来ていることが確認できました。しかし袖の付け根のアームホールが深すぎる為に腕の動きが悪く、当店で補正しました。これはマシンメイドの縫製工場の慢性的な問題のように思います。
これは自分用のジャケットでの実験でしたが、やはりパターンは今までどおり当店でお作りすることになりそうです。
仮縫い後は、一度服をばらして補正を行います。
この補正作業は、手縫いの時代のテーラーは生地に直接線を書き込む手法を用いてきました。その後、効率的な工場縫製が出現するとオーダーシートに数値を書き込む方法も出てきました。しかし数字で指示する場合、寸法を書き込んだ以外の箇所の曲線や連結部分の調整を正確に指示できません。やはり生地に直接線で書き込む方が正確に仕上がってきます。
このため、当店での補正作業は、仮縫い時に調整した正しい位置に線を引き直し、縫製工場に指示する形を守っています。縫製する職人も、数値だけでは誤解や曖昧な部分もあるようですが、実際の形を目で見ることで服の形が把握しやすいのでしょう。
我々テーラーも、伝統的な良い所と合理的で新しい技術を巧みに組み合わせることが必要だと考えています。
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